環境活動の裏の立役者「京のアジェンダ21フォーラム」とは?
2014年10月10日秋晴れの空の下、私たちは京のアジェンダ21フォーラムの事務局長として活躍されている、井上和彦さんにお話を伺いました。今回私たちがお伺いした先は、普段井上さんが活動をされている、「京エコロジーセンター」です。外観は、緑で溢れていました。館内はとても開放感があり、展示物にも工夫されていたのが印象的でした。
私たちは、井上さんが活動している「京のアジェンダ21フォーラム」がどのような取り組みをしているのか、また、その取り組みが、どのように持続可能な社会の実現に繋がっているのかが気になり、井上さんに直接お聞きしました。
Q:はじめまして。お忙しい中お時間をいただき、ありがとうございます。井上さんご自身について教えていただけますか。
A:私は自然が好きで、環境保護に興味があり、大学では林業について学んでいました。アルバイトとして木の調査をしたり、自然との関わりを大切にしてきました。そのような経験が今の仕事にも繋がっているのだと思います。
Q:井上さんは京のアジェンダ21フォーラムの事務局長として活躍されていると伺ったのですが、京のアジェンダ21フォーラムとは、主にどのような活動をされている団体なのでしょうか。
A:活動の一つに事業者の地域での環境CSR活動をサポートしています。CSR(Corporate Social Responsibility)は、企業の社会的責任という意味ですが、企業の利益だけでなく、環境に配慮している企業であることをPRするのは、大企業でないと余裕がないのですね。そこで、小さい企業でも何社か集まっていただいてCSRの実現を可能にするようなサポートをしています。
Q:京のアジェンダ21フォーラムがつくられたものに、KESという制度があると知りました。KESとはどのようなものですか。
A:もともと京都環境マネジメントシステムスタンダード(Kyoto Environmental Management System Standard)の略語です。環境マネジメントシステムというのは、企業や団体等の組織が環境方針、目的・目標等を設定し、その達成に向けた取り組みを実施するための計画や体制のプロセス等のことです。ISO14001という国際基格があり、KESはISO14001より簡単に取得できるようにしたものです。今では全国各地で認定されていますが、その半数は京都で認定されている制度です。
活動内容についても、具体的にお話を伺いました。
Q:現在どのような活動に力を入れていますか?
A:さきほどお話しした環境CSR活動では、現在、環境紙芝居チーム、交通環境チーム、里山保全チーム、環境エネルギーチームがあり、環境にやさしい地域づくりを目指しています。その中では、環境問題について分かりやすく紙芝居を作って保育園などで上演をしたり、出前授業や学校林の保全活動などをしています。
他にも、再生可能エネルギーの普及や公共交通機関や自転車を使う呼びかけなどを行ったりしています。どれも企業と市民、行政が関わる活動になっています。
Q:このような環境に関わる活動をする際、何か気を付けていることがあれば教えてください。
A:物事の多面的な観点を大切にしています。たとえば環境のことを考えると、自動車をできるだけ使わないようにするのがいいですよね。しかし、自動車がなかなか減らない理由として、「自動車のほうが使いやすいから」というだけでなく、「公共交通機関は、利用しにくいから」という理由も考えられます。人間の意識を変えていくことももちろん、社会の仕組みを変えるよう働きかけることが必要な場合もあります。
Q:たくさんのボランティアを募った祇園祭でのごみゼロ大作戦にも関わりがあるとお聞きしました。
A:ごみゼロ大作戦は祭りで使われる紙コップなどの代わりにプラスチックのリユース食器を使い、使いまわしができるようにしました。実はこの企画は当時学生だった人が中心になって京のアジェンダ21フォーラムの中で始まった企画であり、今回は企業からの協力も得ることができ実現しました。
Q:一般の人と企業をつなげるうえで苦労したことはありますか。
A:個人のアイデアの中身や良さを、企業や行政にうまく伝える工夫をするのは大変ですね。さらに専門家とは違い、一般の方のアイデアは、最初の企画段階で実現性が薄いこともありますし、一般の方が持つ感覚と専門的な知識を組み合わせて企画を実現させていくことは苦労します。しかし、その分実現した時の達成感はとてもいいものです。
人と人や、企業と企業の架け橋となって仕事をする井上さんならではの悩みもあったそうです。最後に、今後の活動目標についてお伺いしました。
Q:今後の具体的な目標をお聞かせください。
A:団体として「CO2削減何%」などという目標だけでなく、年月によって変化していく環境問題、社会の流れを掴んでそれに対応していくことが大切だと思います。つまり、柔軟性を大事にしたいですね。
Q:今後環境活動に関わりたい人にとって必要なことはありますか。
A:いろんな分野の方と会話することが大切だと思います。環境の知識を養うことも必要ですが、それ以上に会話の中でお互いの意見を交換することで様々な視点から環境を考える事が大切です。今の学生はインターンシップやフィールドワークなど様々な方と関わる機会が多いので、そういった活動に積極的に参加してみるのは、とてもいいことだと思います。今君たちが私に話を聞いている事もその一つですね。
取材を終えて
今回、京エコロジーセンターに赴き、京のアジェンダ21フォーラムの活動を実際に携わっている方に直接お話しを聞くことで、自分たちのイメージを超えた環境活動の現状を学ぶことができました。環境問題にいきなり取り組むのではなく、まず非営利団体や企業などの参加者と意見を交わし、地域で環境を意識したまちづくりを進めたり、地域住民や企業、団体などが一体となったイベントを作り上げる事が大切だと思いました。そのやり方は地域住民にも親しみやすく、世間の環境意識を高めるために非常に効果的であると感じました。地球規模の大きな課題でもまずは身近なところからはじめる、といったグローカルな考え方と共通すると思います。そのためにも私たち若者は、環境に対する意識改革が必要なのではと考えました。例えば、今身近に起きている環境問題からまちの将来を考えることも、意識改革の一つかもしれません。そういう考えに至るために、今後は環境問題を肌で感じるフィールドワークなどが、子どもの頃からの教育に、より一層必要だと思いました。それは私たち大学生にも必要なことであり、身近な環境活動に積極的に参加する姿勢を大切にしていきたいです。
■公開情報
京のアジェンダ21フォーラム
住所 〒612-0031 京都市伏見区深草池ノ内町13 京エコロジーセンター内
電話 075-647-3535
サイト http://ma21f.sblo.jp/
龍谷大学政策学部清水ゼミナール二回生 今井 夏帆、吉岡 佳音、七里 智洋