淀緑地での桜が身近にある暮らし 石黒佐久良雄さん
京阪淀駅から8分ほど歩いたところに淀緑地公園があります。ここでは春になると早咲きの河津桜が訪れる人々の目を楽しませます。今回、河津桜の植樹や管理等をしている「淀さくらを育てる会」メンバーの石黒佐久良雄(いしぐろ さくらお)さんからお話を伺いました。
淀さくらを育てる会とは
淀に暮らす地元の人が静岡県を旅して目にした河津桜に感激し、「淀にも河津桜を植えたい」と京都市に相談した上で淀の新町緑道に桜を植えたのが始まりだそうです。
河津桜は早咲きで、濃く鮮やかなピンク色の花が咲き、開花期間が約1か月あり、ソメイヨシノよりも丈夫というのが特徴で、2003年に植樹を始め、地域として河津桜を育てていこうと「淀さくらを育てる会」が2006年に設立されました。自治会、老人会の協力を得て、京都市の緑地管理課から植え付け場所のアドバイスを受けながら毎年少しずつ河津桜を植え、現在は淀緑地公園を始め淀城公園や京阪淀駅ロータリー前、淀水垂町、地域の小学校や中学校など淀地域に290本もの桜の木が植えられています。
子どもも親しめる自然豊かな公園にしたい
石黒さんは定年退職後にパートに出かけ、ある会社のメンテナンス担当として草刈りや掃除などをしました。6年経ちちょうどその勤務も終わった頃、近所の淀緑地公園で花を育てるグループがあることを知り、メンバーに加わりました。2009年から今に至る9年間、草木の維持管理をしてきた経験を活かしながら、淀緑地公園の花々をきれいに咲かせるための下支えに貢献しています。
桜は住宅地のそばに植えられているため、落ち葉の清掃や毛虫の駆除といった作業が欠かせません。石黒さんは、9月になると1−2日かけて桜の木を1本ずつ回り、近隣の「毛虫は嫌、殺虫剤も嫌」というリクエストに応えて、殺虫剤を使わずに駆除しています。
枝をポンポンと触って揺すって、落ちてくる毛虫をバケツで受け止めたり、一匹ずつピンセットでつまんで取り除いたりするそうです。「まだ若木なので自分たちでできますが、もっと大きくなったらこの方法では限界があるかもしれません」とつぶやく声に、桜を育てること、管理することの大変さが垣間見えます。
河津桜のほか、フジバカマや皇帝ダリアを植えて、四季を通じて花を楽しめる場所になるように手入れしています。原種のフジバカマにはアサギマダラという蝶がやってきますし、皇帝ダリアは花の少ない12月に咲く花なので地元の人たちから評判が良いのだそうです。趣味の写真を活かして公園内の花や虫,鳥の写真を撮って展示会を開くこともあれば、クイズを作ってこどもたちに花や虫、鳥について伝えたりしています。このように、淀緑地公園をきれいにして地域の人たちにとって親しみのある場所にすることによって「散歩道として、子どもたちに自然を見てほしい」と石黒さんは思いを語ります。
好奇心を持って地域で活動
この活動を初めてから石黒さんは昆虫への興味が湧いてきました。それまでは「モンシロチョウ、オニヤンマ」ぐらいしか見分けられませんでしたが、興味を持ち始めてから京都市青少年科学センターや図書館に通い、昆虫の生態の面白さに魅かれるようになりました。
例えば、カマキリに寄生する「ハリガネムシ」という水中生物の場合、カマキリが水の中に入るとカマキリのお尻からハリガネムシが出てきて、水中で卵を生みます。鳥がその卵を食べてフンをすると、フンの中にある卵をカマキリが口にするため、カマキリの中でハリガネムシは卵から孵(かえ)るというような生態系が分かってきて、昆虫の世界の面白さは尽きないのだそうです。
また、石黒さんは「伏見をさかなにざっくばらん」の「環境を守る会」チームの一員としても活動しています。友達に誘われて「伏見をさかなにざっくばらん」に参加し、「淀水路の水の汚れが気になっている」と話をしたところ「EMというぼかしを使ってみたら」と助言してくれたのが「環境を守る会」チームだったからです。
チームでは、伏見の竹やヨシ、水に関心を持つ人が集まっているため「環境」の幅が広がったそうです。「おかげで、伏見のあちこちへ出かけるようになりました。それに、伏見をさかなにざっくばらんの参加者に淀について話しても、「淀緑地はどこにあるの?」「河津桜って何?」と聞かれるなど、はじめは全く知られていませんでした。今ではだいぶ知ってもらえるようになり、伏見をさかなにざっくばらんは情報交換の場にもなっています。」
近所の公園の手入れに関わるようになって、今では伏見のあちこちで環境保全活動に協力する石黒さん。「昔は無口だったものだから、昔の知人が今の僕を見たらびっくりするだろうな」と笑いつつも、石黒さんは色々な人と関わりながら、自然への優しいまなざしを持って日々活動しています。
取材日:2018年2月10日
エコれぽ隊:亀村