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おふとんでふかふかとエコライフ~近江屋ふとん~

 

京阪藤森駅から5分ほど歩いたところにある「近江屋ふとん」。昭和20年頃から深草商店街で操業を続け、地域住民の生活を支えてきた。

 

今回は、深草商店街の理事長も務めておられる「近江屋ふとん」の三井さんの人柄を垣間見ながら、ふとんでできるエコな工夫やふとん文化のお話、さらには深草商店街での取り組みなど幅広くお話を伺った。

ふとんでできるエコな工夫とは?

夏は蒸し暑く、冬は底冷えする京都の生活。快適さを求め、睡眠中にエアコンを使用することも多くなるが、ふとんでできる工夫は何か。ふとんのプロである三井さんに伺った。

 

――夏と冬は特にエアコンを使いがちになりますが、おふとんでできる工夫は何かありますか?

 

最近では冷感シーツが普及していて、布(し)いて寝るだけでひんやりとしますね。また、敷布団の上に“ござ”を布(し)くと汗も吸ってくれるので快適ですよ。水枕や氷枕もいいですね。

冬の工夫としては湯たんぽがあります。エアコンと違って乾燥しませんし、お風呂の残り湯を使うとエコにもなると思います。

 

――“ござ”は僕の実家でも使っています。湯たんぽも昔から使われていて、日本人の工夫が感じられますね。

 

わたしが幼いころは、“あんか”という陶器に豆炭をいれて、その上にふとんを被せてみんなで暖をとりながら寝ました。コタツのようなものですね。豆炭は今ではあまり使いませんが、昔は生活の中でよく使ったものなのでエコだったと思います。

――最近はふとんも安く買えるので一人暮らしなどに便利ですが、コットン(真綿)以外のおふとんはリサイクルできませんね。

 

真綿のふとんは化学繊維のふとんと違って打ち直しができます。3、4年に一回程度打ち直しをすれば、ふかふかな状態を保つことができます。見た目は同じかもしれませんが、いいものを長く使うことは大切なことだと思います。

 

再注目されるふとん文化

ふとんでできるエコの話から三井さんご自身の話を介してふとん文化へと取材は発展していった。

――昔は“婚礼布団”といってふとんが嫁入り道具の一つだったという話を聞いたことがあります。

 

確かに、嫁入り道具として“婚礼布団”を作り、家族で記念撮影をしていた文化がありました。他にも縁起物で紫の布団や黒の布団が大流行した時期もありました。ベッドを使うようになったりと生活様式が大きく変わったのは、昭和45年の大阪万博以降のことだと思います。

 

――ふとんは生活の中に文化として根付いていたんですね。

 

先程も話の中にでましたが、湯たんぽのように最近また多く使われるようになったものは多いですね。パジャマを部屋着にしたり、おしゃれなステテコがあったりと若者の間では新しい文化が生まれているようですね。

 

最近の流行にも関心がある三井さん。ご自身はどのような寝衣でお休みになっているかという話になった際、三井さんは微笑みながら、「紺屋の白袴です」と返答された。初耳の言葉だったので意味をたずねると、「染物屋がいつも白い袴しか履いていないように、何でもいいんです」とのことで、三井さんの柔和な人柄がうかがえたように感じた。

ふとんと地域に携わって40年以上

三井さんは山口県のご出身。高校卒業後、京都室町のふとん問屋で働きはじめ、その後、奥様の実家である「近江屋ふとん」を受け継いだ。ふとんに携わって40年以上になる。

 

羽毛ふとんをはじめとする寝具の販売やふとんの打ち直し、商品の仕入れなどには自ら出向き、現在も精力的に働いている。最近では、お孫さんが癒しの存在だ。

 

また、深草商店街の理事長として地域の様々なイベントなどの運営にも携わっている。今回の取材場所として使用させていただいた「ふかふか屋」も、地域のふれあいの場として利用している。その名前は、お布団のようにふかふかとした場となるよう心掛け、人との関わりを大切にしていきたい、という三井さんの思いからつけられた。また、今年は竹とんぼでギネス記録にも挑戦されるそうだ。これからも人との関わりを大切にされながら、深草でのよりよい地域づくりに貢献されることだろう。

取材後記

毎日の快適な生活を支える「ふとん」。今回の取材を終えて、「ふとん」の単なる睡眠のための道具としての役割だけでなく、その背景にある日本人の生活に根差した文化や毎日を快適に過ごすための工夫などに改めて目を向けることができたように思う。

 

40年以上も「ふとん」に携わりながら、現在は深草商店街の理事長として地域づくりに参画されている三井さん。便利さを追い求めるだけでなく、人との関わりを大切にされている姿勢は、地域の一員として生活している私たちも見習うところが大きい。

 

取材:弘田 真基

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