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エネルギーと福祉と日々の生活の混ざるまちづくりを。伊東真吾さん

 

平成26年に市民協働発電所として設置を終えた京都市立深草小学校。

この太陽光発電の設置運営を手がける一般社団法人市民エネルギー京都の伊東真吾(いとう・しんご)さんに,深草小学校内の設備を案内頂き,その後お話を伺った。

 

 

■「市民協働発電所」とは?

 『市民協働発電所』とは、市民の出資で行政や地域の団体などが協力して発電所を設置する仕組みと、その発電所のことを指す。現在,京都市では、ウッディー京北と山科のまち美化事務所、下鴨・城陽の生協など合計6カ所で市民協働発電所が設置されている。

 

 

■深草小学校に設置された太陽光発電

校舎の屋上へ続く階段の前で子どもたちが不思議そうに、「何しにきたの?」と聞くので「屋上の太陽光発電を見に来たの」と言うと、子供たちはすかさず「あ!エコのやつや。去年授業でやった!」と反応が返ってきた。

 

太陽光発電で電気を作るだけでなく、深草小学校では太陽光発電を設置後に、屋上にある8つの非常用のコンセントから教室に電気を引いて教材として活用し、電気やエネルギーについての学習を行ったそうだ。この学習の他にも、京都市が市立小学校全校を対象に進めている温暖化防止教育を受けた子どもたちは『小さなエコエキスパート』とも呼べるかもしれない。

また、災害時には、避難所の電力として使われるよう設計されており、防災面で地域を守る役割を担っている。

 

屋根の上で太陽光パネルが整然と並ぶ光景は圧巻だ。屋上にはパネルの他に太陽光パネルからの電気を直流から交流電力に変換するパワーコンディショナなどの設備があり、伊東さんから変電機の仕組みや売電のことなどを話して頂いた。

 

 

■いろんな人や団体の関わりで市民恊働発電所は出来ている

この再生可能エネルギー普及事業は、京のアジェンダ21フォーラムで行っていた研究会で「京都市中の屋根を活用して、市民が出資する太陽光発電の推進が出来るのではないか」と提案されたことをきっかけに始まった。

まず、京都市は教育部局に相談しながら太陽光パネルのつけられる学校を調べた。すると、小学校の体育館の屋根は平坦で太陽光パネルに角度をつけることが難しく、加えて屋根の厚みが薄いため、たやすく設置できる学校はなかなか見つからなかった。

そんな中、 深草小学校の体育館は地域の図書館や集会所として利用できるようにしっかりとした構造で作られていたので、太陽光パネルの設置も可能だった。

 

平成26年4月から『ミュージックセキュリティーズ』を通じて一口1万円で出資金を募集したところ目標額を達成した。「FacebookやTwitterなどの、SNSで発信をしてくれる人がいたおかげ」と伊東さんは言う。インターネットの普及に伴い、30〜40代のSNSに慣れた世代だからこその応援であり、顔は見えなくとも互いにゆるくつながって太陽光発電の普及を支えている。そして、出資者へ深草の野菜を届けるなど地域とのつながりも作られている。

 

 

■伊東さんが環境問題に関わることとなったきっかけ

 奈良県田原本町に生まれた伊東さんは,大学時代を京都で過ごした。環境経済を学ぶうち,学外でも,様々な団体とつながり環境活動に携わった。

 例えば,学園祭で洗える食器を使う取組。今こそリユース食器を学園祭で扱う大学は増えてきたものの,約20年前は珍しかったそうだ。 自分でも「変わった存在だったのでは」と当時を振り返る。 昔は学校でゴミを燃やしていたため、そこで出る灰を環境保全センターで分析してもらいに行くなどしたそうだ。

 エネルギーとの関わりは、『ひのでやエコライフ研究所』で『省エネラベル』の担当を任されたことがきっかけで、省エネルギーや再生可能エネルギーの調査に携わるようになった。初めは『アンペア』や『ワット』といった用語も分からない素人だったので、働きながら知識をつけていった。

 

 

■伊東さんの日々

 伊東さんは現在亀岡に住む小学生の父親だ。近所の人たちから野菜など色々なものを頂くそうで、普段仕事が立て込んでいない時は「のんびりしていますよ」と穏やかに笑う。

音楽鑑賞が趣味で、色々な音楽を聴いている。奥さんとお嬢さんが習うお琴の発表会にも時々行くようだ。

 『インドア派』なのかと尋ねるとそうでもないようで、4、5年前まであちこち仕事で出張する度に貯まるマイルを集めては、マレーシアやインドネシアにも行っていたとか。「また旅行に行ったり放浪したりしたいですね」と伊東さん。公共交通が好きで、バスに乗り継いで国境を超えたこともあり、ドアが開きっぱなしでスピード全開のバスに乗るのが「面白い」とのこと。「日本のバスも地方に行くと楽しめますよ」と生き生き語る。

 深草に対する印象では「市民農園『風(かざ)緑(みどり)』のお手伝いをしていて、伏見はこんなにも風光明媚で自然の豊かさが溢れていると思いました。昔の人が住んでいた風情をもう一度見つけていけばもっと深草の地域が楽しくなるのではないかな。」

 

 

■「究極エコじゃない人」のためのエコライフ

話をする中で、「実はカップ麺やポテトチップスなどのジャンクフードが好き」という伊東さん。「これまで省エネ相談など色々やってきたなかで思ったのは、『究極にエコな生活をしている人』には省エネ相談ってやってもしょうがないということ。ジャンクフードじゃないけれど、そこそこ家電を使っている人や車を使う人にこそ、省エネの余地があってこれからエコライフを浸透させるチャンスがあると思いますね」と伊東さんは語る。

 

『危機感をもって動こうとすること』、『人が出会う場があること』、『活動していく為の条件に恵まれていること』がエコライフの大事な条件だと思います。今後は「自分の環境やエネルギーなどの話ができる‘出会いの場’をつくっていきたいです。」

 

「本当は田舎でまちづくり会社をやってみたいです。一人暮らしのお年寄りに電気の供給をしたり、ご飯を宅配したり、エネルギーと福祉、日々の生活が混ざったサービスの提供がしてみたい。電気は野菜じゃないから、それ自体が面白いものではないけれど、日々の暮らしの中で役立つものがあれば良いと思っています。」

 

 

■インタビュー録

私がインタビューをする間も、伏見のいい所探しを伊東さんの目を通して知ることができた気がします。『風緑』の手伝いをしているという伊東さんからの、「あんな(面白い)場所があるんですね!」という言葉に、自分が最近路地野菜を求めて畑へ足を運んでいることと重なって、なんだか親近感を覚えました。自分の食べるものを作っている農家さんの顔が見えること、地域と繋がること。エコというキーワードを通して人と人が繋がっていく未来があるのかもしれません。

 

(記)岡本詩子

 

リンク:

市民エネルギー京都HP<http://kyoto-renergy.org>

京のアジェンダ21フォーラム<http://ma21f.sblo.jp>

ひのでやエコライフ研究所<http://www.hinodeya-ecolife.com>

 

 

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