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伏見の人と川をつなぐパイプ役〜伏見水環境保全センター

流した水はどこへ?

洗濯、歯磨き、料理、トイレ、お風呂…。普段何気なく流している水がその後どうなっているのか、みなさんはご存じだろうか。下水道を流れる生活排水や工場排水は、どこへ向かっているのか?

 

その謎は、伏見区横大路を流れる宇治川のほとりにある「伏見水環境保全センター」に取材した中で見えてきた。今回取材に応じてくださったのは、所長の杉浦さんと所長補佐の依田さんだ。お二人とも京都市上下水道局のベテラン職員であり、センターの様々な設備や京都の他の浄水施設について、様々な知識や経験をお話ししてくださった。

伏見水環境保全センターの下水浄化プロセスをこの記事で紹介し、私たちが毎日使う水の関わりに気付くきっかけとなれば幸いである。

 

伏見水環境保全センターとは

水の浄化施設は主に2つに分けられる。「浄水場」は水道水を作るための施設(上水道)であるのに対し、「水環境保全センター」は生活排水などがそのまま川などに流れないようにするための施設(下水道)である。伏見水環境保全センターは、京都市に4つある水環境保全センターのうちの1つである。

 

伏見区民約14万6千人分の生活排水を浄化処理し、宇治川に再放流することが、伏見水環境保全センターの活動である。水量でみれば、1日に7万〜8万m3もの下水を処理しており、これは小学校のプール200杯以上にも相当する量であるそうだ。もしこれらの汚水が処理されずに放流されていたらどうなるだろうか。

 

伏見区と言えば、豊富な地下水や、水路があるまちなみが特徴であるが、伏見水環境保全センターは伏見区の水環境を守るうえで必要不可欠の役割を担っているのだ。

 

下水の浄化プロセス

おおまかに言えば、下水道を通ってセンターに集められた生活・工場排水は、いくつかのプロセスを経て汚れを取り除かれた後、滅菌消毒され再放流される。各家庭や工場から集められた排水は、最初に「沈砂池」へ溜められる(写真)。沈砂池には蓋がされており、私たちは少し離れたところから見ていたものの、辺りはごみ箱のような臭いがしていた。

沈砂池で大きな泥などを沈めた後、ポンプ場で水が吸い上げられ、次の「最初沈殿池」へ送られる。最初沈殿池は大きな丸い水槽で、ポンプでくみあげた下水をゆっくり流して泥を沈め、うわ水を次の「反応タンク」に送る。沈んだ泥は汚泥処理設備へ送られる。ここではもう、臭いをあまり感じなかった。

ここから2つの「反応タンク」、「最終沈殿池」へと水が流れる間に、「嫌気好気法」という方法で浄化が行われる。これは、化学薬品ではなく水に住む微生物に働いてもらって、下水に含まれる窒素やリンなどを取り除くというものであり、自然の力を感じさせられた。最初沈殿池では濁っていた水も、最終沈殿池では透明に近い状態になっていた。そして、最終沈殿池内のいけすではなんと金魚が泳いでおり、金魚が住めるほどに浄化されていたことがわかった。

 

そしてこの水は最後に「オゾン反応タンク」へと送られる。オゾン発生装置(写真)でつくったオゾンと水を反応させることで、水が消毒されるうえ、より透明に近くなるという。このおかげで、放流された水が宇治川を濁らせることはない。

 

さらにオゾンを発生させる過程で発電も行っており、災害時などの非常電源としての役目も果たすという画期的なものであった。

さらなるエコの取組みは?

伏見水環境保全センターは、そもそも汚れた水を浄化するというエコライフには不可欠な役割を担っている。しかし、さらに環境に配慮するエコ活動は?と尋ねてみると、かつては取り除かれた汚れ(活性汚泥)を焼却した灰をセメント素材に加工して利用していたそうだ。建設資材や大阪の埋め立て地、京都市役所前のベンチに至るまでこれが使用されていたと聞いたときは驚きであった。しかし現在では、コスト面からこの活動を継続することができなくなっているという。私たちが排出した汚れが循環利用されるという“エコ”は、そう簡単にできないということを痛感した。

 

その代わり、伏見水環境保全センターでは電力使用を抑えることで環境に配慮している。施設の使用電力の1割を照明設備が占めているが、これを感知式のものに変更。不要な照明の利用を減らすことが期待されている。また多くの電力を必要とする反応タンクでも、設備の更新時には電力消費量の少ないものを採用しているという。最新の省エネ設備を積極的に導入することで環境負荷を少しでも減らそうと努力している様子が伺えた。

 

 

連絡先

伏見水環境保全センター

京都市伏見区横大路千両松町255

TEL 075-621-4661

 

取材

龍谷大学政策学部清水ゼミナール2回生 井上滉平、小松右詩、濱田直幸

同行

伏見区役所 輪形成継

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