ありのままの酒造り〜東山酒造
東山酒造ってどんなとこ?
京阪電車の伏見桃山駅を出ると、たくさんの人でにぎわう大手筋商店街がある。人々の流れに沿って歩き、一つ道を曲がると景色が一変する。そこは蔵などが立ち並び、ひと昔前のような景色である。東山酒造の酒蔵はその中の一つである。
イチオシの一杯!
今回は参事の邑田(むらた)さん、広報の湯浅さん、杜氏(とうじ)の保坂(ほさか)さんにインタビューさせて頂いた。お三方とも寡黙そうに見えたが、インタビューが進むにつれて緊張がほぐれ酒造りに情熱を注いでいることが伝わってきた。そんな東山酒造が作ったこだわりの一杯が“坤(こん)滴(てき)”である。物事のすべての始まり大地を意味する“坤”とその大地から生まれた米から造られる一滴の酒としての“滴”から“坤滴”と名付けられた。
良いお酒には良いお米を!
酒造りのこだわりとして、まずお米についてお話し頂いた。“坤滴”には田中農場の山田錦というお米を使用している。田中農場のお米は必要以上に農薬を与えず、有機栽培に近い減農薬で育てている。さらに土作りも勾配(こうばい)をつけるなどして、稲本来の力強さをサポートする形で栽培を工夫している。このこだわりが良いお米を生み出し、酒造りにつながっている。
ちょうどいい「伏水」!
伏見で酒造りをする理由として水へのこだわりがある。伏見の水は「伏水」と呼ばれている。酒造りに嫌われる鉄分が少なく、酵母の活性を助けるカリウム、マグネシウム等が豊富だ。そういった成分が多いと低温でも発酵しやすく、きめ細やかなまろやかなお酒になる。東山酒造のお酒の特徴は「伏水」により穏やかにゆっくりと発酵し、お米の成分を醸(かも)し出した、はんなりとした味だと言う。
節水のための努力
使用する水は井戸からひいている。酒造りには大量の水を使用するため節水の意識を常に持っている。たとえば、お米を洗う際にはあえて人工的に泡をたてている。水で洗うと米同士でぶつかって割れてしまったりするが、泡で洗うとデリケートに洗うので割れることを防げる。また、泡で洗うと効率よく糠(ぬか)が取れることが科学的にも実証された。このことにより以前は一度にお米を洗った後の排水がタンク3本に収まりきらなかったが、今は収まるようになるどころか少しタンクに余裕があるそうだ。
無駄なものなんてない!!
酒造りにおいての廃棄物について尋ねてみたがほとんどないという答えが返ってきた。酒粕(さけかす)はブームになったこともありかなり売れる商品として扱われている。お米を洗い終えたとぎ汁から白いものが出るが、薬品を使うとそれが凝縮沈殿される。沈殿物に関しては関連会社に送って最終的には肥料になる。これらのことはエコのために意識してやっているのでなく、昔から普通にやっていたと言う。
改めることもない?!
さらに大手メーカーなどは空調設備を利用して夏でも酒造りをするが東山酒造はしない。空調設備で多大なエネルギーを消費するのではなく、発酵管理のできる寒い時期だけ酒造りをすることが自然に対して優しいだろうという考えからだ。そういった昔から意識せずに行ってきたことが今のエコにつながっている。だから改めて取り組むことはないというのが東山酒造のエコへの考え方だ。
乾杯!の声を日本酒から
東山酒造の今後の方針としてはもっと日本酒を普及してきたいとのこと。「日本酒というとある程度年を重ねた酒豪が飲むイメージがある。そこを払拭して若い人たちや普段あまりお酒を飲まない人にも飲んでほしい。」と熱く語られた。実際に“坤滴”を飲んでみたがお酒に強くない人にも飲みやすい柔らかな味だった。口当たりが優しいため一杯目からも飲みやすいだろう。京都市には乾杯の一杯目を日本酒で飲む「日本酒乾杯条例」がある。この条例とともに普及していくのではないだろうか。
取材後記
取材が進んでいる最中に「杜氏にならないか」と勧誘を受けたことが一番印象的だった。杜氏になるには師匠の下につき、認められる必要がある。杜氏はさまざまな組合があり、組合によって酒造りの方法も違ってくる。代々継承していると思われがちだが、一から学ぶ人も受け入れている。最近では女性や外国人の杜氏も増えているそうだ。自分たちのような若者にもっと興味を持ってほしいと語っていたので、この記事を通じてそういう人が増えてほしいと思う。
取材先
東山酒造
京都府京都市伏見区塩屋町223
TEL 075-604-1880
FAX 075-604-1886
http://www.fushimi.or.jp/brewery/higashiyama.html
参事 邑田淳一様
広報 湯浅知子様
杜氏 保坂康夫様
取材者
龍谷大学政策学部2回生 大下智輝、河野拓海、藤本和、松元彰汰
同行
京都市まちづくりアドバイザー 佐藤友一