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農を通して「生命」を伝える

 京都市伏見区深草にて、農家の息子として生まれ育ち、園芸学を専門としながら、30年にわたって環境教育の実践に力を注がれている、京都教育大学環境教育実践センターの梁川正教授にお話を伺いました。





​農業実習を経て自然の大切さに気づく環境教育
 「農業は、自然の中で人間が生きていくうえで欠かせない営み」として、梁川先生は、子どもや大学生、シニア世代など幅広い年代に向けて、種まきから収穫まで行う栽培体験を通じて、生き物を育てることの大切さを伝えています。
 必要なものや欲しいものは何でも買える“便利”な時代であるからこそ、私たちは日頃から口にする野菜がどのように育てられているのか分かりにくい社会になっています。
従って、農業に関心を抱かない人は多く、ましてや日常的に食している食べ物がどのように育てられているかに気を配ることもありません。このことは、日本の農業について接して学ぶ機会が不足していることとも少なからず関係しているのでしょう。現在、学校教育では農業は積極的に扱われておらず、小学校低学年で栽培を体験するものの、学年が上がるにつれて理科、家庭科、技術などのカリキュラムにおいて農業に触れる時間はほとんどないのが現状です。
「畑で野菜が育つことは体験しないと分からない」-だからこそ、梁川先生は実習に重点を置き、大学での農業実習を始め、一年間親子で取り組む栽培体験教室を行っています。


資源の循環のしくみを学べる環境教育実践センター
 植物の栽培や農業実習を中心に環境教育を実践している京都教育大学環境教育実践センター。
敷地内には、無菌環境実験室を始めとする様々な実験室のある建物があり、屋上には太陽光発電が整備されたり、建物全体に雨水活用の工夫がなされたりしています。建物の外には、多種多様の植物が育てられている温室や農業実習を行う畑が広がっています。
 環境教育実践センターでは、平成16年度より「環境教育有機物リサイクルシステム」が導入されました。これは、京都教育大学学生寮の食堂や一般家庭からでる生ごみや雑草などの有機物を生ごみ堆肥化装置に入れて堆肥に変える仕組みです。有機物は2日間で堆肥となり、栽培体験にこの堆肥を利用することで、資源が循環されるのです。
栽培体験や農業実習を通じて、学生を始めとする体験者は資源が循環されるしくみを体得します。

 

​環境教育にかける思い
 梁川教授は、大学院で園芸学を修了した昭和54年に京都教育大学で教え始めました。それ以来、京都教育大学にて教員を志望する学生にこそ、農業を体験してほしいとの思いで、日々実習指導をされています。毎日の水やりや雑草抜きなど、食物や植物を育てるには職員の数も少なく、常に人手不足はあるものの、地域ボランティアの方々の支援を得ながら、これからも「環境教育実践センターを継続していくこと」が自分としての使命であり、今の日本の環境教育を支えることなのだと力強く語られました。
 また、今後は新しく木材ペレットの冷暖房設備を設置したいそうです。木材ペレットとは、おが粉やかんな屑などを圧縮して固めた小粒の固形燃料のことをいいます。冷房設備まで備えるとしたら費用がかかり過ぎてしまうかもしれないけれど、せめて環境教育実践センター内を木材ペレットストーブで暖められれば、学生たちがバイオマスエネルギーを身近に感じてるきっかけになるだろうと抱負を述べられました。環境教育実践センターの外では、木材ペレットを土の上にまくことで雑草を生やさないという効果もあるようで、すでに農園にて活用されていました。環境に配慮した施設運営に常に気を配り、農園実習にを通じて命の大切さを伝える梁川教授。梁川教授とともに学ぶ学生たちは土に触れながら、生きる力を身につけ成長していることでしょう。

 

 

プロフィール
梁川 正 (やながわ ただし)
1972年 大阪府立大学農学部園芸農学科卒業
1974年 大阪府立大学大学院農学研究科修士課程修了
1979年 大阪府立大学大学院農学研究科博士課程単位    取得満期退学
1979年 京都教育大学教育学部にて研究、教え始める。
2013年現在 京都教育大学附属環境教育実践センター教授(農学博士)

【伏見へのメッセージ】地元深草への愛着があります。岡田山を始めとする大岩山周辺地域の環境改善がもっと進むことを願います。

京都教育大学環境教育実践センター
京都教育大学第2学舎
〒612-8431 京都市伏見区深草越後屋敷町112
TEL&FAX 075-641-3872

栽培学習を中心とする環境教育を実践する畑や温室、有機物を堆肥にするリサイクルシステムや太陽光発電設備を備えた講義室や実験室などがあります。

 

編集後記
自分の通っている大学に、こんな魅力的な先生がいらっしゃるとは思いもしませんでした。これからも梁川先生との関わりを大切にしていきたいと思いました。(森川)

環境教育とは、今後の農業を良い方向へ転換していく要素であると理解したほか、環境教育や農業の実情を知り、これまで食べ物に対して無頓着だったと思いました。(藤原)

生きている限り農に関わることがどの世代にも大切であることに気づき、たとえベランダガーデニングだとしても、自分で食べるものを育ててみたいです。(亀村)

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