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土とふれ合い、人とふれ合う向島「健幸菜園」

〜大濱育恵さん

近鉄向島駅からニュータウンを抜けて、田園風景を見ながら宇治川方面へ歩いた所に「健幸菜園」はある。今回株式会社健幸プラスの代表取締役として、菜園の企画運営を行う大濱育恵さんにお話を伺った。

 

 

菜園活動を始めたきっかけ

株式会社健幸プラスは「食で地域と地域医療をつなぐ会社」として平成26年2月に設立された。医療法人健幸会むかいじま病院と提携し、主に病院の入院・通院患者向けと向島地域住民対象の配食サービスを行っている。

 

会社を立ち上げた時、むかいじま病院から、病院が所有する休耕地の活用について相談があった。大濱さんが実際その土地を訪ねてみると、1300坪の土地いっぱいに、大人の背丈ほどの草が生い茂っていた。

 

「ジャングルみたいだった」と大濱さんはその頃を振り返って笑う。いざ草刈りをしたら、目に見えたものはゴミ、ゴミ、ゴミ!ソファなどの家具や不要な砂利の不法投棄場所となっていたのだ。それらを片付けた後、周囲の意見を聞きつつ「ここで何ができるだろう?」と考えた結果、菜園を始めることにした。

 

縁のあった園芸療法士に声をかけ、健幸菜園のスタッフとして畑全体の管理をお願いした。

 

「やりたいなあと思える場を作るのが代表としての役割で、運営は最適なスタッフに任せています」。広大な土地をあせらず、少しずつ耕す中で、この土地は野菜を売るなどの収益事業ではなく、社会とのつながりを持つ場にしていこうと思った。

 

そこで、向島で暮らす住民、伏見区役所主催の交流会「伏見をさかなにざっくばらん」で出会った人々や病院の患者が畑作業を一緒に行う「オープンデー」を設けた。口コミで少しずつ輪が広がり、オープンデーには、シニアの方々や親子連れ、がんとともに生きる人が集まっている。

 

健幸菜園には、オレガノやタイムなどのハーブ、人参、いちご、じゃがいも、麦などが植えられている。基本的には菜園スタッフが栽培計画を立てるのだが、オープンデーに集まる人たちの「いちごを植えたい」「生姜を植えたい」などの期待に応えて植えられた作物もある。

 

収穫された作物はむかいじま病院の食事の材料となったり、作業メンバーで分け合ったり。例えば、薬を使わずに育てられる菜園での人参は、むかいじま病院の入院患者のためのジュースになる。

食事療法の一環で、がんになりにくい体質づくりのために毎日5、6本分の人参をジュースにして飲む患者たちからは「菜園の人参ジュースは味が全然違う!おいしい!」と喜ばれている。

 

 

菜園活動での気づき

大濱さんが菜園での活動を始めたことで気付いたことがいくつかある。

 

まず、農薬を使わずに野菜を育てるのは大変だということ。農薬を使わないということは人の手がそれだけかかっているということだ。「無農薬や有機人参の市場価格が高いのも、それだけの価値があるということが分かり、農家さんへの感謝の気持ちが強まりました」。

 

次に、土いじりの楽しさに気づいた。大濱さんは、畑作業に特別興味があったわけではなかった。ベランダ菜園をかじった程度だったが、スタッフとともに野菜やハーブを育てる中で土に触れる喜びを感じた。「ストレスが溜まったなあと思ったら、雑草を抜きに菜園に来たりします」と話す。自分たちで野菜を育てる喜びや採れたて野菜のおいしさ、収穫物をみんなで分け合ううれしさも感じながら、楽しく畑作業を行っている。 

 

また、健幸菜園には水道、電気、ガスがない。頼りになるのは土と太陽と雨水。

 

インフラが整っていない中でなんとかしようと考えて過ごすうちに、大濱さんは「無い」という状況を前向きに受け入れられていることに気づいた。「ここに来て、便利なことがいつも快適だという訳ではないことに気づきました」。また「災害が起きてライフラインが途切れた時に、ここでの経験や工夫が活かされるのではないかとも思います」。

 

大濱さんは第1子を妊娠中に病気が見つかり1カ月間入院した。看護師として働いてきた大濱さんだが、自分が患者の立場になり健康のありがたみが身に染みたという。「生きるというのは食べること。だからこそ、身体にいいと思えるものを選んで口にしたい」と大濱さんは語る。

 

向島の人たちにとっての居場所「健幸菜園」に

今後、大濱さんは菜園を向島地域の人たちの居場所にしていきたいと考えている。

 

「近所づきあいはだんだん希薄になってきたと言われています。向島地域の人たちが菜園で集まるうちに顔見知りになり、ゆるやかなコミュニティができればいいなと思います」。

 

オープンデーに来ていた参加者から「2回目の参加です。種を撒くなど子どもにもできることがあり楽しかったです。今日撒いた人参の芽が出るのが今から楽しみです」という声が聞かれた。

また、「今日植えた生姜が無事に育って、葉生姜や生姜を収穫できますように」と参加者が言うとすかさず、菜園スタッフが「生姜の水管理がこれから大変だわ」と返事をし、参加者一同アハハと笑った。

 

初めて参加する人も、常連の人も、半日畑作業をして打解け合う雰囲気が健幸菜園にある。それはきっと子どもも大人も、健康な人も病を抱える人も、何かしらできることがあるからだろう。

 

「ここに来たらあなたの居場所がある」そんな場になればいいなと大濱さんは願っている。

 

 

問合せ

 

株式会社健幸プラス

京都市伏見区向島四ツ谷池14番地19

 

TEL:075-603-3345 / FAX:075-603-3346

HP:http://kenko-plus.co.jp

facebook: www.facebook.com/kenkoplus

 

オープンデー:原則水曜日午前10時〜12時。参加希望の方はお気軽にお問合せください。

現在、向島地域の方々に食事を届ける配送スタッフ募集中。徒歩、自転車、三輪バイクで配れる方、ぜひよろしくお願いします★

 

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