地域で取り組むエコ活動「桃山エコ推進委員会」①〜大倉正暉さん〜
「桃山エコ推進委員会」は2014年桃山学区に暮らす住民有志で立ち上げ、2015年4月から規約を作り、地域ぐるみでエコ活動を進めています。総会で年間スケジュールを作成し、毎月役員会を開き、組織的かつ精力的に活動されています。
今回は、桃山エコ推進委員会委員長の大倉正暉さんに委員会の活動とご自身の実践しているエコについてお話を伺いました。
1.ロケットストーブ
桃山エコ推進委員会では、2015年4月からロケットストーブ製作を始め、毎年10台以上、通算30台以上のロケットストーブを作ってきました。ロケットストーブづくりで使われる材料の基本構成は廃棄する一斗缶1つとペール缶2つで、資源のリユースそのもの。これに、半直・えび曲がり・T曲がりという3種類の煙突各一本とパーライト(断熱用)・鹿沼土を店で買い求めますが、本体作りからゴミ減量が始まる点に大倉さんは惹かれました。「週に何回もロケットストーブでごはんを炊いています。汁物、炒め物、焼き物、それにピザ焼きでも何でもできるので、ふだん使いしないと気が済まない、ということで家では「釜ジイ」と呼ばれています(笑)」。
ロケットストーブは元々アメリカのアウトドアグッズですが、(暖房用の)ストーブとよく間違われます。英語のstoveには暖房器具のほかに日本語の「(料理用)レンジ・コンロ」の意味があり、ここでは後者だとのこと。オールシーズンで軒下・屋外調理ができ、ご飯6合なら20~30分(圧力鍋の高圧調理時間だけなら1〜6分)で炊けるほか,鍋や鉄板を使って様々な調理にも対応でき、災害時の炊き出しにも利用可能です。
「ロケットストーブのことを知らない人もいるので、『作る』だけでなく、実演して『見てもらう』ことも意識しています。桃山自主防災会の防災訓練に展示参加したときは、焼きおにぎりやすいとん(団子汁)を作って炊き出しの模擬実演をしましたよ」と、ロケットストーブの普及活動に努めています。
2.生ゴミ堆肥
桃山エコ推進委員会では、試験的な生ゴミ堆肥づくりも活動当初から行っています。今年は、地域の人に「段ボールで生ゴミ堆肥を作りませんか?」と呼びかけて本格的な実習を実施したそうです。
「専門家に教えてもらったあと、家庭での実用化を目指し、役員みんなで実践しながら創意工夫を重ねてきました。専用容器ではなく、手に入りやすい段ボールを使うのも工夫の一つです。生ごみ堆肥を作る過程で、土の中にいる虫・ミミズなどが生ゴミを食べてフンを出し、そのフンを微生物が食べて分解するという、生産者→消費者→分解者という『エコシステム』の全体像が分かってきました。」
委員会では、主に生ゴミは各家庭から、堆肥づくりに必要な腐葉土は醍醐寺境内から、米ぬかはお米屋さんから、木くずは地域の工務店からいただいたそうです。燻炭など買ったものもありますが、基本的に「あるものを使う」ところが生ゴミ堆肥づくりの魅力だそうです。その結果、「わずかずつでもゴミ焼却炉の負担・コストが軽減されるなら、希望もわきますよね」とやりがいを伝えられました。
3.グリーンカーテン
2015年、京都市による「エコ学区」(※印1)2年目の支援物品としてゴーヤの苗をもらいグリーンカーテンをしました。グリーンカーテンは夏場の遮光と冷却に役立ち、節電や省エネにつながります。今では半分の苗は種から育てて、より多くの家庭でグリーンカーテンに取組めるようにしているそうです。「今後、地域で生ゴミ堆肥を作った人たちがグリーンカーテンを育てるようになるといいですね。」と大倉さんは委員みんなの期待を代弁します。
4.出前授業
「地元の大人がどんなエコ活動をやっているのか伝えてください」という桃山小学校からのリクエストに応え、2年前から毎年1回、5年生の児童にエコ推進委員会の活動を紹介しています。桃山小学校の「こどもエコライフチャレンジ」とコラボして、児童への地域環境学習をサポートする活動が今年から始まりました。
また、今年2月には、児童館で低学年の子どもたちと一緒にレモンを使って電池を作りました。このような活動を通じて地域とのつながりが広がっています。
5.大倉さんが日々実践するエコ
大倉さんは1973年から桃山地域に暮らしています。勤めているときは学区との関わりは奥さまの文子さんに一任していて、退職してから大倉さんも地域に関わるようになりました。
京都市内の全学区で「エコ学区」の取組みが進められる際、桃山学区に自治連合会がなかったため、各種団体からの一部有志と住民有志が「桃山エコ推進委員会」として新しい組織を作りました。委員会設立前から奥さまの文子さんが有志集めの中心になり、夫婦で役員を務めています。
地域ぐるみでのエコ活動に邁進するほか、大倉さんは日々の暮らしの中で可能な限り二酸化炭素が出ない暮らしを心がけています。例えば、自宅の屋根に太陽光パネルを取り付けたのは、偶然にも京都議定書が採択された年(1997年)でした。また、太陽熱温水器や雨水タンクを設置しています。雨水タンクはトイレや水やりに使い、上水と下水の中間である「中水」という考え方を実践しています。
軽トラを運転するものの、去年ガソリンバイクに不具合が出たのをきっかけに、「化石燃料など減らせるものは減らしたい」という思いから、電気ミニバイクに乗ることにしました。「電気ミニバイクはほとんど音がせず、滑っているような感じがします。友人などには『車輪のついたグライダーで地上を滑走している』と説明しています」と大倉さんは語ります。今春2台目を買い、妻はフル活用だとか。
モノの選択については『エコ』という言葉には『エコロジー』のエコと『エコノミー』のエコが重なります。自宅にお金のかかる太陽光パネルや太陽熱温水器を選んで設置に踏み切るとき、「もとは取れなくても『環境投資』と考えたらどうかな。私たちはずーっと環境に負荷をかけて生活しているんだから。」お金がかかるからといって、けちって何もしないのではなく、迷惑をかけている環境にお詫びの気持ちを込めて、環境負荷を軽くするために「投資(献金)」させてもらう、そういう選択をしようと、夫婦で話し合って決めました。
桃山エコ推進委員長として地域ぐるみで環境にやさしい暮らしを実践しながら、また夫婦で話し合いながら、環境負荷を減らす暮らしを実践している大倉さん。「これからは役員以外のメンバーをもっと増やしていきたい」と語る大倉さんの桃山地域でのエコ活動はこれからも続きます。
※1 エコ学区とは、環境にやさしいライフスタイルへの転換や省エネなど、地域ぐるみでエコ活動を取り組んでいる学区のことです。現在、市内の全222学区がエコ学区として活動しています。
取材後記
メンバー一人ひとりがエコを心がけ、地域での実践を通して活動の輪を広げ続ける桃山エコ推進委員会、そして大倉さん。正に ”Think Globally, Act Locally” を体現されていると強く感じました。
エコな取り組みは、どんなことでも、誰にでも、誰とでも参加することができる。帰り際に電気ミニバイクで「滑走」される大倉さんの後ろ姿は、エコの大切さと楽しさを物語っていました。(弘田)
桃山エコ推進委員会
委 員 長 大倉 正暉(おおくら まさあき)
副委員長 勝浦 英雄(かつうら ひでお) 中川孝子 (なかがわ たかこ)
取材
エコれぽ隊:弘田、亀村
取材日:平成29年9月26日