次世代につなげるSDGsプロジェクト〜京都教育大学SDGsプロジェクト
SDGsという言葉を知っていますか?
近年、日本でも知名度が徐々に上がっており、今や世界的に注目されている言葉です。1970年代には、人間の経済発展のあり方を変えなければ地球はもたないと危惧され、持続可能な発展という考え方が提唱されるようになりました。SDGsのSDの意味は「持続可能な開発(Sustainable development)」です新しい言葉のように聞こえるかもしれませんが、約40年前から徐々に浸透し始めました。その後、国連サミットでSDGs (持続可能な開発目標)が採択されました。
SDGsでは、目標6「安全な水とトイレを世界中に」や、目標12「つくる責任、つかう責任」など17の目標を掲げ、2030年までに全目標を達成することを目指しています。
京都教育大学ではこれまでに環境教育に取り組んできましたが、環境教育だけではより良い社会は形成されないという考えのもと、「ポストESD(持続可能な開発のための教育)プロジェクト」としてSDGsプロジェクトが進められています。
今回、京都教育大学SDGsプロジェクト代表の井谷恵子先生に、現在の活動について伺いました。
京都教育大学では、2019年7月17日に「KYOKYO SDGsフォーラム2019」を開催しました。『誰一人取り残さない教育の実現』というテーマで、平等で包摂的な教育の実現に向けた教育研究の推進を目指して講演や活動報告を行いました。これは、SDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」にあたります。
また、学内で毎年11月に行われる藤陵祭で、京都教育大学生協学生委員会が食品ロスをなくすための『みらい教室』を開催し、家族で来る子供たちと食べ残しゼロに関するゲームを行う啓発活動を行いました。世界中には、約8億人もの人が飢餓で苦しんでいます。そんな中、日本では年間643万トンの食品が売れ残りや食べ残しなど食べられないまま廃棄されています。したがって、このような食品ロスを減らす取り組みはSDGsが掲げる目標2「飢餓をゼロに」や目標12「つくる責任つかう責任」に繋がります。
SDGsプロジェクトのFacebookページでは、世界各地のSDGsに関するニュース記事を共有したり、京都教育大学での取組みを発信したりしています。
例えば、性暴力被害にあった女性の治療や支援にあたってノーベル平和賞を受賞したコンゴの医師の記事や、気候行動サミットでの女子高生グレタ・トゥンベリさんの演説を取り上げた記事が投稿されました。このように京都教育大学では様々なSDGs活動を行っています。
井谷先生は体育科の教授であり、プロジェクトにおいてSDGs目標5「ジェンダー平等」の実現に力を入れています。スポーツにおけるジェンダー問題の例を挙げると、性別確認検査という問題があります。生まれ持ったホルモンが一般的な人と比べて偏っていることにより、競技選手が性を疑われ、検査の対象にされる結果、その選手が性的アイデンティティを見失ったり、身体的・精神的苦痛を感じたりする問題が起こっているそうです。SDGs目標5の「ジェンダー平等」を実現するには、解決に向けての考えを柔軟に、幅広い視野で捉え、様々な状況とつなげて(リンクして)進めていくことが大事だと井谷先生は考えます。
井谷先生がこの活動を続けていくにあたっての課題を伺ったところ、大きく分けて2つの課題を述べられていました。
一つ目は、財政的に余裕があるとは言えない国公立大学で、SDGs活動を重要な活動として位置付けていくことは簡単ではないということです。SDGsに取り組むことは大学のPRやイメージアップにもつながると井谷先生は考えていますが、苦労されているそうです。
二つ目は、忙しい学生にどのようにして SDGs に関心を持ってもらい、次のアクションに移してもらうか、という課題です。学生が目にするSNSを使った啓発活動など、大学内でのSDGsプロジェクトの存在感を高めていく工夫をしています。
今回の取材で、井谷先生は京都教育大学だから出来ることの1つとして『次世代につなげる』ことがあるとおっしゃっていました。教育大学ということもあり、卒業生は将来教員になる人が多いため、彼らがSDGsについて知れば、その教え子にも伝わっていくのです。大学教員としての井谷先生は次世代の育成者となる教員を育成するという使命を持っているのだと強く感じました。
やがて教員になる学生達がSDGsを理解し実践し子供たちに伝える。そのような循環を作りたいというのが井谷先生の願いです。
京都教育大学S D Gsプロジェクト
Facebookページ:https://www.facebook.com/kyokyosdgsproject/
取材:龍谷大学政策学部清水ゼミ2回生 大井愛海、大幡恒平、中塚圭祐、三谷愛実、山川拳