手間を惜しまない有機茶栽培〜中西義明さん
ふだんお茶を飲む機会は多いですが、伏見で行われているという「有機栽培茶」というものが、どのようにして栽培されているのか関心を持ちました。そこで、近鉄向島駅から車で5分のところにある宇治川沿いのお茶農園「中西豊文園製茶場」の園主中西義明さんにお話を伺いました。
中西さんは歴代250年以上続いてきた茶生産農家の生まれで、17歳の時から茶づくり一筋60年。中西さんのお宅にはさまざまな品評会での賞状が飾ってありました。中でも中西さんが力を入れているのは、抹茶のもととなる碾茶(てんちゃ)というお茶です。一般的にお茶は茶葉を揉んで乾燥させるのですが、碾茶(てんちゃ)は揉まずにつくるお茶の種類で、有機JASの認定を受けている(※)そうです。さらにそこから精選した茶葉だけを石臼で挽き上げると、有機抹茶が出来ます。中西さんは笑顔がとても素敵な方で、話を聞いていると、お茶に対する情熱がとても伝わってきました。
※有機JAS茶とは……長年有機肥料のみで栽培し化学肥料・化学薬品を一切使わないで、今までの肥培管理茶とは混じることなく栽培管理・製造・精選加工に至るまで、毎年の農林水産省による監督・指導・立ち入り検査の下で認証された、安全で安心して飲むことができるお茶。
Q.お茶づくりを始めたきっかけは何ですか?
「家業であるお茶栽培を兄が引き継いでいたのですが、兄が亡くなってしまい私が引継ぎました。お茶栽培をはじめて10年くらいは、山城地域中を駆け回ってお茶栽培のアドバイスやこだわりなどを農家さんに聞きに行きました。その中で畑の土が「ふかふか」だったことに感銘を受け、自分もそのような土で茶栽培をしたいと思いました。山から新しい土を持ってくるのにたくさんのお金がかかり苦労したのに、土の栄養分が少ないなどの理由からお茶がうまく育たないといった失敗もしました。ですが、それでもお茶栽培を続けてきたのは、毎年違った味の茶ができることがおもしろいということが、やりがいにつながったからです。
Q.お茶づくりのこだわりはありますか?
「‟人には作れんお茶を作ること‟です。そのために生産、加工、販売まですべて自分でやっています。最初は製造委託していたのですが、私が栽培した茶を加工する受託者が「自分のお茶」であると言えることが悔しかったため、製造のための工場を自分で建てました。最初は機械の使い方などわからないことばかりでしたが、機械の業者などたくさんの人からアドバイスを受けながら製造していました。茶葉のこだわりとしては、全国の品種一覧表から色のいいものや香りがいいもの、味の濃いものをよく選んで茶葉を生産することと、毎年土を改良して堆肥栽培をすることです。」
Q.力を入れていることは何ですか?
「有機JAS茶の普及のために、小学生などを茶畑に招いたりして実際に茶摘みを体験してもらったり、製造工程の途中で茶葉に触れたり、茶葉からお茶を入れて試飲させてあげたりしている活動です。お茶づくりを、単なる見学ではなく体験して、体感するということをモットーにしています。」
Q. 困っていることは何ですか?
「農家の高齢化に伴って、お茶を摘む摘み人が少なくなってきていることが悩みの種です。一人で茶を摘むことはとても大変なので、アルバイトの人を雇い毎年40~50人の人に茶を摘んでもらっています。摘み方の荒い人がいると、枝を一緒に摘んだりしてしまうので、一瞬でも気が抜けないですね。」
Q.若者への一言をお願いします
「お茶を大好きになってほしいです!!!
ペットボトルが普及したため、茶葉から沸かしてお茶を飲む人が減り、お茶本来の味を味わう機会が減ってきているようです。若者にも元来の茶葉から沸かしたお茶を飲んでほしいものです。」
取材後記
中西さんから少しの気候の変化などちょっとしたことで茶葉の香りや味が変わることを伺って、栽培を続けるには管理の徹底が大切であり、また大変な苦労をされているのだと知りました。さらに碾茶のようなあまり馴染みのないお茶も飲ませていただきました。今まで飲んでいたお茶には、渋みや甘みといった味を感じなかったのですが、茶葉から沸かしたお茶を湯のみで飲むと、さまざまな味の変化があり、ペットボトルのお茶とこんなにも違うものなんだなと印象に残りました。
取材:井上裕美 出口真生樹 半林奈津子
同行:輪形成継、亀村佳都
中西豊文園製茶場
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